産後ケアレポート(6)
出産は、10か月にも及ぶ妊婦生活のゴール。
そして、母としての人生が始まる新たなスタート地点でもあります。
周囲は勿論、自分自身も赤ちゃん中心の生活スタイルをとりがちですが、
実はお母さんにとってその時期は、決して軽んじて過ごしてはいけない大切な時期なのです。
『産後ケア』という言葉をご存知ですか。
出産を経験した身体や心の状態を妊娠する前の状態にまで回復させることを指して『産後の肥立ち』という昔からの言葉もありますが、
近年ではその回復に対する支援等も含めて、呼ばれる機会が増えてきました。
産褥期といわれる産後4~7周期を安静期間とするのが定説で、
状況によっては1年という長いサイクルで回復をみることも薦められています。
この時期をどのように過ごせばよいかについて、まとめてみたいと思います。
まずは身体のこと。出産時は『リラキシン』というホルモンの分泌により、骨盤が緩みます。
この状態の度合いが過ぎると内臓が下垂するため、膀胱の圧迫から尿モレになったり、痔が悪化したりします。
また、会陰の傷も上から圧迫されることにより開き、治りが悪くなることも。
産後は緩んだ骨盤を正しい位置に戻すよう専用のベルトで矯正するとともに、
骨盤や背骨のバランスをよくする産褥体操をしてください。
私の場合は、出産直後にトラブルがあり、会陰の痛み・腫れ、悪露が1か月近く続いてしまいました。
そのため産後の骨盤矯正がうまく出来ず、くしゃみをした時などの尿モレを経験しています。
程なく2度目の出産をしたのでその状態は改善しましたが、あまり気持ちの良いものではないので、
是非骨盤矯正はしっかりしていただきたいと思います。ベルトを正しく着用することも重要です。
もう一つ、身体のこと。妊娠中の飲食過多や運動不足により増えた体重ですが、
赤ちゃんがお腹から出れば、ごっそり落ちると考えていませんか。
現実は思っていたより減らなかったという人の方が多いのです。
そこで必要なのが、産後ダイエット。一般的に脂肪の柔らかくなっている産後6か月までが、減らし時だといわれています。
ダイエットといっても出産後ですので、過度の運動や食事制限は禁物です。
5Kg前後の赤ちゃんを抱っこしたり、お世話のために動き回ることで日々結構な運動量となっています。
また、母乳で育てている人なら、おっぱい100mlでお茶碗半分のカロリーを消費したこととなるので、
頑張りすぎなくても大丈夫。
私もそれで妊娠前より2Kg(出産時より10Kg)減らすことが出来ました。
無理なく、運動も産褥体操程度から始めてみてください。
次にお話したいのは、心のこと。妊娠中は気持ちが前向きになるホルモン『エストロゲン』が分泌されています。
ですが、胎盤がなくなるとこのホルモンの分泌もぐんと減り、その影響で気分が落ち込みやすくなるのです。
また、母性を育む『プロラクチン』や、癒し・信頼感を与える『オキシトシン』など、さまざまなホルモン分泌も増減しています。
「イライラ、神経質になる」「気持ちが焦る」「やる気が出ない」「思い通りに事が進まない」
「興味や喜びがわかない」などといった『産後うつ』の状態になるのはこのため。
ホルモンバランスの変化が影響しているということがわかると、少し楽な気持ちになれませんか。
生活スタイルが変わったのですから、以前と違うのは当たり前なのです。
ゆっくりどっしり構え、たまには大声で泣いたりして(ストレス緩和の脳内ホルモン『エンドルフィン』が出ます)、発散してください。
ただ、一番重要なのは一人で抱え込まないこと。
心や身体が悲鳴を上げる前に、人に頼ることも必要です。
里帰りや母親に手伝いに来てもらうなど、出来れば身内にお願いしたいところですが、
遠方・多忙・性格の不一致などで頼れないこともあります。
そんな時には、自治体の保健師さんに相談したり、全国各地にある『産後ケアセンター』『産後ケア施設』といった公共の機関の利用を検討してみてください。
心身の回復と赤ちゃんを育てる姿勢をサポートしてくれます。
最後になりましたが、本当に大切なのは《赤ちゃんと過ごす今しかない時間》であること。
自我が芽生える前後期の赤ちゃんにとっては、お母さんが頼れる唯一の存在であるのです。
『産後ケア』を上手くし、ゆとりある心と笑顔でこの時間を一緒に楽しく過ごしてください。
注いだ愛情により、きっと豊かな人格を持つ子供へと成長してくれることでしょう。